中国でも広がり始めた「家庭医」スタイル
欧米では、定期検診から予防接種、慢性疾患の管理まで、長期にわたり同じ医師が診療を行う「家庭医(かかりつけ医)」制度が根付いています。安定した、継続的な医療の提供が可能になるこの仕組みは、長年にわたり定着してきました。
一方の中国では、こうした家庭医スタイルはようやく広がりを見せ始めています。健康意識の高まりとともに、都市部を中心に、家庭医を軸にした新しい診療モデルに挑戦するクリニックが登場。従来の「必要なときに通院する」形式ではなく、積極的なケアや個別フォロー、医師との長期的な関係を重視したアプローチが注目されています。
Distinct HealthCare は、このような「家庭医」スタイルのチェーンクリニックを中国でいち早く提案・実践してきた先駆的な存在です。
日本でも、支店ごとの業務差・システム非統一・属人的運用など、現場レベルでのデジタル化の壁に直面している企業は少なくありません。本記事では、中国の医療機関がどのようにその壁を乗り越えたかをご紹介します。
これは医療現場の話ですが、工場の保守点検、自治体の住民対応など、業務の個別最適が求められる場面に広く応用できます。
Distinct HealthCare が描く、家庭医ケアの未来
10年以上前、Distinct HealthCare は全科診療を軸にした長期的なケア体制を構築するため、中国の主要都市にクリニックを開設しました。現在では全国12都市に展開し、協和医科大学、北京大学、華西医学中心などの一流医大出身の医師300名以上が常勤する、多診療科対応のワンストップ型クリニックを運営しています。診療科目も小児科、眼科、皮膚科、美容医療など多岐にわたります。
Distinct HealthCare の特徴は、会員制の「ファミリーカード」制度にあります。家族全員の健康が一枚のカードに紐づけられ、専属の医療チームが家族の状態を継続的に把握し、個別に対応。病院を症状ごとに渡り歩くのではなく、信頼できる“かかりつけ医”のような存在が、長期的に寄り添ったケアを行います。
とはいえ、中国の医療業界は今なお保守的で、変化の遅い分野です。多くの公立病院では診療科が縦割りになっており、継続ケアや患者との関係構築は重視されていません。民間においても、こうした家庭医型モデルはまだ少数派です。Distinct HealthCare は、市場に既成の仕組みがない中で、チェーン展開・家庭医サービス・能動的なケアを融合した独自モデルを、自らの手で構築してきました。
事業の成長とともに、次のような課題も浮き彫りになっていきます:
- 都市ごとにクリニック運営に差があり、サービスの標準化が困難
- 診療科ごとにフォローアップの内容が異なり、共通ツールでは対応しきれない
- 開発リソースが限られ、新機能の追加には時間と労力がかかる
- サービスは進化しても、現場業務は手作業が多く、効率の低下やミスのリスクがつきまとう
Distinct HealthCare はこうした課題を通じて、頻繁で軽量、かつ分散的なケアモデルには、従来の開発手法や市販システムでは限界があると実感したのです。
ノーコードは“妥協”じゃない――Distinct HealthCare が選んだ理由
開発経験がなくても、現場で必要なツールを自分たちで作れないか?
その問いから、Distinct HealthCare はさまざまなノーコードやSaaSツールを試しました。けれど、見た目は簡単でも実際には制約だらけ。設定が煩雑だったり、新しい開発ロジックを強制されたりと、少人数の開発体制では到底回しきれないものばかりでした。
そんな中で求めていたのは、次の条件を満たす“ちょうどいい”ツール:
- 既存システムとスムーズにつながり、独自のデータ構造も扱える柔軟性
- プロダクトマネージャーが自分で UI を構築・調整できる操作性
- 安全でスケーラブルなプライベートデプロイ対応
- 開発者がバックエンドやデータベースの制御権を保てるオープン性
そのすべてを備えていたのが NocoBase でした。
「ちょっとした機能なら自分で調整できます。いちいち開発チームを待たなくていいんです」 — Iris Meng(Distinct HealthCare プロダクトマネージャー)
NocoBase が現場に受け入れられた理由は、この「自分で作れる自由」があったから。
しかも、これは開発者の役割を減らすのではなく、役割分担をより柔軟にしたということ。バックエンドの制御は開発チームが、UI の構築はプロダクトマネージャーが――それぞれの専門を活かしながら、効率的で安定した開発体制を実現できたのです。
「ノーコードを選んだわけじゃない。もっと賢く、もっと早く働ける道を選んだんです」 — Iris Meng(Distinct HealthCare プロダクトマネージャー)
“1つ作ったら、次が生まれる”——NocoBase が広げた社内イノベーション
Distinct HealthCare が NocoBase を使って最初に開発したのは、フォローアップ管理システムでした。
一般的な病院のように「患者の再来を待つ」のではなく、診療科ごとにシナリオに応じたタスクや連絡頻度を設計し、能動的にケアを提供できる仕組みを目指したのです。
美容医療と眼科から始まり、NocoBase で完全にカスタマイズされたフォローアップシステムを3か月で構築。従来より開発工数を約60%削減し、導入後はフォローアップの実施率も、患者の満足度も大きく向上しました。
システムは HIS、EMR、薬局システムなどと連携し、診察履歴や処方、予約情報などを1画面で確認可能。フォローアップの作成や記録もスムーズに行え、現場の業務は格段に効率化されました。
この成功をきっかけに、他の部門からも「自分たち用のツールが欲しい」と声が上がり、Distinct HealthCare は業務チーム自らがシステムを構築できるようトレーニングを開始。NocoBase の柔軟な設定機能と細かな権限管理のおかげで、現在では7つの部門チームがそれぞれの業務ツールを自分たちで構築しています。
「複雑なスプレッドシートをもう一歩進化させた感じ。開発チームに頼らず、自分たちで欲しいものが作れるんです」 — Iris Meng(プロダクトマネージャー)
開発のボトルネックを解消するだけでなく、業務チームの自走力を引き出し、部門を越えた新しい連携の形を生み出す。それが NocoBase によって始まった、Distinct HealthCare の新しい働き方です。
“システム”以上の価値を持つ存在
Distinct HealthCare にとって、NocoBase は単なる業務ツールではありません。これは、従来の「一度作って終わり」のシステム開発を変える、新しいデジタル化のスタイルそのものです。
現場の声にあわせて素早く仕組みを変え、繰り返し改善できる。その柔軟さが、開発スケジュールに縛られず、真に業務に根ざしたシステムをつくることを可能にしています。
直感や経験則、手作業が今も主流の医療業界で、こうしたアジャイルな仕組みこそが、「家庭医」スタイルの継続ケアを実現する鍵になっています。
Distinct HealthCare の公式サイトには、こう書かれています:
「私たちは、医療の本質を大切にしています。診療はエビデンスに基づき、不要な検査や投薬は行いません。」
こうした姿勢、そして先進的な取り組みを続ける Distinct HealthCare のような存在があるからこそ、デジタルツールは単なる業務効率化を超えて、医療という“本質的に変わりづらい分野”にも、確かな変化を根づかせていけるのです。
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