Second-Brain は NocoBase を使って、金融機関向けの AI システムをこう作った

香港の AI 企業 Second-Brain は NocoBase を採用し、高セキュリティと短期間の課題を克服し、金融企業向けの AI システムを構築し、効率的な導入と能力の積み上げを実現しました。

AI スタートアップが下した重要な決断

Second-Brain は香港に拠点を置く AI スタートアップで、金融やコンサルティング出身のメンバーによって設立されました。企業向けに、AI を活用した意思決定支援システムの開発を手がけています。

Second-Brain

企業向け AI システムの開発で一番の難関は、実はモデルの構築ではありません。その背後にある、バラバラで整っていない業務データです。社内ルールやワークフロー、業務記録は別々の場所に保存され、形式も統一されておらず、内容が食い違っていることすらあります。こうした情報を整理・構造化しなければ、AI にとって意味のある分析は不可能です。

そこで Second-Brain がまず取り組むのが、企業内のルールや業務プロセス、外部の法規制などを集約し、AI にとって理解可能な「知識の土台」を作ることです。

銀行向けに AI ナレッジシステムを構築する際、Second-Brain はいくつもの壁に直面しました。

  • 複雑なアクセス権が必要な数百ページ分の管理
  • インターネット接続なしの完全オフライン環境での導入
  • ユーザー体験を損なわず、短期間での納品

モデル開発と専門特化型プロダクトに集中したい彼らにとって、柔軟にカスタマイズでき、自社で運用でき、しかもすぐに使い始められるシステムが不可欠でした。そのためには、強力なデータ設計機能と設定のしやすさも必要でした。

なぜ NocoBase を選んだのか?

プロジェクトが始まった当初、Second-Brain はさまざまなローコード/ノーコードプラットフォームを徹底的に比較しました。国内外の SaaS 型ツールやオープンソースのプロジェクトも候補に挙がりましたが、導入形態やライセンスの制限、ソースコードの管理面で課題があり、クライアントの求める「完全オフライン」や高い情報セキュリティ基準には応えられませんでした。

一時は、フロントエンドからバックエンドまで自社でフルスクラッチ開発する「内製」の案も検討しました。これなら制御性が高く、知的財産の保護にもつながるからです。

しかし、納期は非常に短く、クライアントの期待も高い状況では、コストもリスクも大きすぎました。

そうして悩んでいたとき、チームは NocoBase と出会いました。

NocoBase は SaaS に依存せず、柔軟で拡張性があり、必要に応じて自在にカスタマイズできます。また、短期間での導入も可能です。

さらにオープンソースであることで、仕組みを細部まで理解でき、クライアントからの変更依頼にも素早く対応できました。

Second-Brain は最終的に NocoBase をシステム基盤として採用し、構築・納品に着手しました。

真のチャレンジは、ツール選びそのものではなく、それをどう使って複雑かつデータ中心の AI アプリケーションを素早く形にしていくか、という点だったのです。

プロジェクト実装:課題とその乗り越え方

このプロジェクトの目的は、単なるナレッジ管理ツールを作ることではありませんでした。AI が実際に「理解して使える」長期的に活用可能な知識基盤を築くことでした。

目指したのは、社内の規程やルールといったバラバラな情報をきれいに整理し、分類・モデリングした上で、AI モデルがアクセスできるよう API 化すること。そのためには、高度なデータ設計や構造整理、インターフェース設計の力が必要でした。

金融業界のクライアントであるため、情報セキュリティの要件も非常に厳しく、システムは完全にオフラインで運用される必要がありました。すべての更新は、物理的に隔離された環境で承認・転送されるプロセスを経る必要がありました。

NocoBase の技術的な実現性が確認された後、Second-Brain はアーキテクチャ設計と技術選定に進み、最終的に案件を獲得してプロジェクトを進めました。

NocoBase はシステムの中核として活用され、チームは以下のような成果を実現しました:

  • 規程文書や業務ルールを AI が読み取れる形式の構造化データに変換

Transform regulatory documents and policies into structured, standardized data

  • AI の Q&A 機能の基盤となるデータインフラを構築し:
    • 日常的な質問やポリシーの問い合わせに対応
    • 複数のデータソースをまたぐ業務系のクエリに対応
    • 管理層向けに構造化された分析結果を出力

Power the data infrastructure behind the AI Q&A module

  • 社内ツールを通じて AI 活用をサポート:

    PDF や Word、画像ファイルなどの文書をテキスト化する前処理ツール

    Document preprocessing

    選別された文章から Q&A ペアを自動生成し、ファインチューニング用のデータセットを強化

    Generating Q&A pairs

  • 規則やルール間の関連性をナレッジグラフとして可視化するため、ECharts のカスタムプラグインを開発

ECharts plugin

プラグインアーキテクチャ:想定以上の成果

厳しいセキュリティ要件に直面する中で、NocoBase のプラグインベースの仕組みは、導入と開発の両方において想像以上の効果を発揮しました。

Second-Brain は主要な機能をすべて個別のプラグインとして切り出し、システム更新の際は必要な部分だけを提出すればよくなりました。その結果、クライアントのレビュー工程にスムーズに対応でき、セキュリティチェックや動作確認の負担も大幅に軽減されました。

ソフトウェアのアップデート管理が厳格な金融業界には、まさに理想的な仕組みでした。

利点はそれだけではありません。プラグイン方式により、開発スピードも大きく向上しました。

最初のプラグインを作る際は構造やテンプレートを固めるのに2週間ほどかかりましたが、それ以降は既存のプラグインを複製・カスタマイズするだけで、短期間で新しい機能を追加できるようになりました。

現在では、グラフ可視化、権限管理、データ整備などの機能をカバーする約20個のプラグインを開発済み。今後のプロジェクトにも使い回せる資産が着実に蓄積されています。

現場からのリアルな声

プロジェクトの導入期間を通じて、Second-Brain は NocoBase の実運用を通じた数々の学びを共有しています。

  1. 安定性

NocoBase は頻繁なアップデートにもかかわらず、常にバージョン間の互換性をしっかり保っており、一度もダウンしたことはありませんでした。これは、止まってはならない金融系のシステムにおいて非常に重要なポイントです。

「NocoBase は、バージョンをまたぐアップグレードでも一度も不具合を起こしたことがありません。本当に驚くべき安定性です」 — Second-Brain 技術責任者・Zhengxing Yang

  1. 連携体制

プロジェクトを通じて、NocoBase の技術チームとは非常にスムーズでスピーディな連携ができました。バグ対応も機能追加の相談も、どれも真摯で素早いレスポンスが返ってきました。

「オープンソースだけど、決して孤独じゃない」——この支え合うような開発体制は、セキュリティ要求が厳しい今回のプロジェクトにおいて大きな強みとなりました。

プロジェクトは完了しましたが、その中で作り上げた仕組みや考え方は、今でもクライアントの日々の業務にしっかりと根付いています。

まとめ

Second-Brain は、少人数のチームでありながら、複雑かつ高セキュリティな AI システムを無事に構築・納品しました。

その背景には、NocoBase をシステム基盤に採用し、手間のかかる構築作業から解放されたことがあります。その結果、本当に力を注ぐべき AI の中核機能に集中することができました。

NocoBase が目指しているのは、まさにこうした形です。煩雑で繰り返しの多い開発作業を減らし、チームが創造性と実用性のある仕事に集中できる環境を提供すること。

セキュリティに厳しく、要件が複雑な業界においても、柔軟性のあるノーコード/ローコードプラットフォームなら、これまで難しかったシステム開発のあり方を大きく変えられる——このプロジェクトがそれを証明しています。

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