序文
この1年で、AIとノーコードの融合は想像以上のスピードで進化しました。もはや「AI機能を追加する」段階ではなく、アプリの作り方そのものを変えつつあります。
ノーコードも同じく変革期を迎えています。これまでの「画面づくり・データ構造設計・フロー設定」から、さらに一歩進んで「AIがモデリングやロジック生成に関わり、人と協力してシステムを作る」段階へと移行しています。これはもはや概念ではなく、実際のプロダクトで現れ始めている変化です。
💡 参考:《ノーコードか、それともVibe Codingか?》
本記事では、GitHub の no-code 関連プロジェクトをもとに、AIを搭載、あるいは知能化機能を備えたオープンソースツールを選び、Star数順にまとめた「AI × ノーコードツールリスト」を紹介します。
これは、昨年公開した《GitHubで最もStarを獲得したオープンソースノーコードツールランキング》の続編でもあります。今年は「Star数」だけではなく、「AIがどれだけ現実的で再利用できる形で活用されているか」に注目しました。
もしあなたがAIツール、業務自動化、Agent開発、あるいはスマートアプリの構築に関心があるなら、このリストはきっと良い出発点になるはずです。
第11位 NocoBase
公式サイト:https://www.nocobase.com
⭐️ Star数:17k
概要
NocoBaseは、データモデリングを中心としたオープンソース・自社ホスティング可能なノーコード開発プラットフォームです。「AIアシスタント(AI社員)」機能により、業務システムに高度なAI自動化を取り入れています。
核心AI機能
AIアシスタント(AI社員):システム内で自由にAIを設定し、承認、データ処理、コンテンツ生成などの業務フローに参加させることが可能。
自然言語によるモデリング:業務要件を自然言語で入力するだけで、AIがテーブル構造やフィールドを自動生成。
プラグインによるAI拡張性:今後はプラグインマーケットを通じ、さまざまな大規模モデルやAIサービスを柔軟に追加できる仕組みを提供予定。
最適な利用シーン
企業内システム構築:CRM、承認フロー、資産管理、チケット処理など、権限管理とデータの正確性が求められる場面。
セキュリティ・コンプライアンス重視のチーム:完全自社ホスティングが可能で、金融・医療・行政などにも適合。
技術理解のあるチーム:ノーコードを活かしつつ、AIやコード拡張も取り入れたいユーザーに適している。
AIの組み込み方
NocoBaseでは、AIが構築フェーズと運用フェーズの両方に深く統合されています。
構築時:AIアシスタントがデータモデリングやページレイアウトの作成を自動支援し、開発スピードを大幅に向上。
運用時:ユーザーの指示やコンテキストに応じ、データ検索、レポート分析、業務Q&AなどをAIが自動で実行し、よりスマートで効率的なシステム運用を実現します。
第10位 Sim
公式サイト:https://www.sim.ai/
⭐️ Star数:17k
概要
Simは、AIエージェント型のワークフローを“ドラッグ&ドロップ”で構築できるオープンソースのプラットフォームです。コードを書かなくても、AIモデル、API、データベース、外部サービスを直感的につなげることができます。
核心AI機能
ビジュアルなエージェントフロー構築:フローチャートのような画面でノードをつなぎ、AIの処理プロセスを視覚的に作成できます。
複数サービスの統合:さまざまなLLM、API、DB、外部ツールを1つのフローに組み込めます。
オープンソース & 自社ホスト可能:ローカルや自サーバーに自由にデプロイでき、データの安全性や運用の自由度を確保。
最適な利用シーン
業務プロセスの自動化:定期データ収集、メール返信、承認フローなどの繰り返し業務をAIエージェントに任せる場合。
カスタマーサポート / AIアシスタント:ナレッジベースに接続したチャットボットを構築し、自動応答や情報検索を行わせる場面。
システム間の橋渡し役:複数のシステムをつなげる必要があるとき、Simがハブとなって統合的なAIワークフローを構築。
AIの組み込み方式
Simでは、AIが「推論して、判断し、行動する」能力を持つエージェントとして動作します。各エージェントが自律的にタスクを実行し、外部サービスと連携することで、ワークフロー全体が知的に動くようになります。
第9位 Coze Studio
公式サイト:https://www.coze.com/
⭐️ Star数:17.9k
概要
Coze Studioは、ByteDance(バイトダンス)が提供するAIエージェント開発プラットフォームです。コードを書かなくても、もしくは最小限のコードで、AIエージェントの構築・テスト・デプロイまでを一貫して行うことができます。
核心AI機能
ビジュアルエージェントビルダー:モジュールや処理ロジックをドラッグ&ドロップでつなぎ、直感的にAIエージェントを構築可能。
複数モデルの簡単接続:OpenAI・Claude・Qwen・Ollamaなど、多数のLLMテンプレートを標準搭載。モデル切り替えや併用もスムーズ。
ワンクリックデプロイ:ローカル/クラウド環境どちらにも一瞬で公開でき、開発・検証の高速化に最適。
最適な利用シーン
社内向けAIツール開発:FAQボット、承認アシスタント、監視ロボットなど、業務効率を高めるツールの作成に。
AIアプリのプロトタイプ作成:カスタマーサポートBot、ナレッジQAなどのアイデアを素早く形にして試作・公開したいとき。
複数モデル・サービスの連携:異なるモデルや外部APIを組み合わせて高度なAIシステムを作りたい場合に便利。
AIの組み込み方式
Coze Studioでは、AIが“補助的な機能”ではなく、構築プロセスの中核として設計されています。ユーザーはブロックをつなぐだけで、複数のモデルが協調して動作するAIシステムを作り上げることができ、ビジュアルな開発からAI主導のアプリ構築へと進化できます。
第8位 Budibase
公式サイト:https://budibase.com/
⭐️ Star数:27.1k
概要
Budibaseは、社内ツールや業務アプリを素早く作れるオープンソースのローコード/ノーコードプラットフォームです。従来のフォーム作成やワークフロー構築に加えて、AIを活用したロジック生成やデータ処理機能を取り入れています。
核心AI機能
AIによるフィールド自動生成:テーブルの列作成、データの整形・要約・クリーニングなどをAIが支援し、構築時間を大幅に短縮。
ロジックアシスト機能:条件式やロジック設定時に、AIがリアルタイムで候補や修正提案を提示。
AIエージェント連携(開発中):業務フローにAIエージェントを組み込み、タスクの自動実行やトリガー処理を行えるよう準備が進行中。
最適な利用シーン
社内システム・管理ツール:承認フロー、入力フォーム、ダッシュボード、レポートなどを短時間で構築。
データ処理・整備の効率化:大量データのクレンジング、要約、変換などをAIで自動化したい場合。
自動化ワークフローの構築:レポート自動作成、メール送信、定期タスクなどをAIに任せて実行。
AIの組み込み方式
Budibaseでは、AIが「開発支援ツール」というよりも、構築プロセスのパートナーとして機能します。フィールド生成やデータ処理、ロジック最適化をAIが自動で手伝うことで、業務システムをより速く、よりスマートに構築できるようになります。
第7位 ToolJet
公式サイト:https://www.tooljet.ai/
⭐️ Star数:36.7k
概要
ToolJetは、オープンソースのローコード開発プラットフォームです。自然言語の入力とドラッグ&ドロップ操作を組み合わせることで、社内ツールやAIアプリをより短時間で構築できます。
核心AI機能
自然言語でアプリを自動生成:欲しい機能や画面を文章で伝えるだけで、AIがアプリの骨組みを作成。
AIエージェント&自動化:AIがフローを起動したり、タスクやAPI実行を自動で処理。
AIによる開発支援:SQLやJavaScriptのコーディング中に、コード補完や改善提案をリアルタイムで提供。
最適な利用シーン
企業の業務システム構築:顧客管理、注文処理、承認フローなどのバックオフィス業務。
AIを活用したアプリ機能の追加:スマート検索、チャットボット、ドキュメントQA、レポート自動生成など。
AIの組み込み方式
ToolJetでは、アプリ開発のあらゆる段階にAIが活用されています。自然言語でページやロジックの雛形を生成できるだけでなく、SQLやJSを書く際にもAIがコード提案・最適化を行い、より効率的な開発を支援します。
第6位 Flowise
公式サイト:https://flowiseai.com/
⭐️ Star数:45.6k
概要
Flowiseは、LLM(大規模言語モデル)とAIエージェントに特化したビジュアルワークフローツールです。モデル・ツール・ロジックをドラッグ&ドロップでつなぐだけで、チャットボットや検索システムなどのAIアプリを素早く構築できます。
核心AI機能
グラフィカルなフロー設計:モデルの呼び出し、ツール連携、処理の流れが一つの画面で視覚的に確認できる。
複数モデル・外部ツール対応:OpenAIなどのLLM、ベクターデータベース、APIなどを自由に組み合わせ可能。
フローのエクスポート&埋め込み:作成したAIフローはAPIやサービスとして出力でき、他システムにも組み込みやすい。
最適な利用シーン
LLMを使ったAI機能構築:QAボット、情報抽出、文章生成フローなど。
社内システムのAI化:既存システムに推論や自動処理を追加し「AI中台」として活用。
AIアプリのプロトタイピング:異なるモデルやロジックを試したいとき、素早くフローを作成・検証できる。
AIの組み込み方式
Flowiseでは、ユーザーはフローを視覚的に配置するだけで、AIがモデル呼び出し、データ処理、API連携を自動で管理します。これにより、質問応答・検索・自動処理などのAIアプリを、コードなしで効率的に構築できます。
第5位 Anything-LLM
公式サイト:https://anythingllm.com/
⭐️ Star数:50k
概要
Anything-LLMは、チャットボット、検索システム、AIエージェント、RAGアプリなどを構築できるオープンソースのAI統合プラットフォームです。
核心AI機能
ドキュメントに基づく対話 & コンテキスト検索:資料をアップロードすると、AIがその内容を参照しながら回答してくれる。
マルチモデル切替機能:OpenAIやClaudeなど、複数のモデル・プロバイダーを自由に切り替えて、コストと性能を最適化。
プラグイン & エージェント拡張:カスタムツールや機能モジュールを追加できる拡張機構を備え、柔軟に機能を拡張可能。
最適な利用シーン
社内向けナレッジベースQA:社員が文書データに直接質問し、必要な情報を素早く取得できるシステム。
ローカルAIアプリの構築:機密データを扱うチームが、クラウドを使わずローカル環境でAIアシスタントを動かしたい場合。
軽量AIエージェントの組み立て:エージェント×ツール×対話UIを簡単に組み合わせ、小さく素早くAIアプリを作りたいとき。
AIの組み込み方式
Anything-LLMでは、複数モデルの切替やプラグイン機構が標準搭載されており、AIが文書の検索・理解・回答生成・自動処理までを一括で担当します。これにより、チャット・検索・RAGといったアプリを効率的に構築できます。
第4位 NocoDB
公式サイト:https://nocodb.com/
⭐️ Star数:58.2k
概要
NocoDBは、データベースをAirtableのようなスプレッドシート画面に変換できるオープンソースプラットフォームです。Postgres・MySQLなどのデータベースをGUIで操作できるようにし、エンジニアでなくても扱えるのが特徴です。最近では「Noco AI」によって、データ建模や管理にAIが導入されています。
核心AI機能
自然言語でのテーブル自動生成:業務内容を文章で入力すると、テーブル・フィールド・ビュー構造をAIが自動作成。
フィールド・リレーションのAI提案:テーブルを設計する際に、AIが適切なフィールドや関連関係、ビューの候補を提示し、設計の迷いを軽減。
ドロップダウン選択肢の自動生成:クラウド版では、AIが入力内容に応じた選択肢を自動で作成し、設定作業を効率化。
最適な利用シーン
業務データ管理システム:CRM、在庫・資産管理、プロジェクト管理などのバックオフィス業務。
ローコード × AIモデリング:データベースに詳しくないユーザーでも、テーブル設計・ビュー作成・リレーション設定を素早く完了できる。
AIの組み込み方式
NocoDBでは、自然言語による建表、フィールド・リレーションのAI提案、選択肢自動生成といった機能をデータモデリング・管理プロセスに直接統合。テーブルやビューを作成・編集する際に、AIがリアルタイムで支援してくれます。
💡 さらに読む:NocoBaseとNocoDB: オープンソースのノーコードツールの徹底比較
第3位 Strapi
公式サイト:https://strapi.io/
⭐️ Star数:70k
概要
Strapiは、オープンソースで利用できるHeadless CMS(ヘッドレスCMS)です。コンテンツ管理とAPIベースのバックエンド構築に適しており、近年はAIプラグインの追加によって、コンテンツ制作・編集・配信のスマート化が進んでいます。
核心AI機能
AIプラグイン拡張:コミュニティや自作プラグインを通じてAIモデルを接続し、文章生成・内容チェック・要約などを実現。
コンテンツ自動生成/提案:AIが文章の続きを作成したり、構成の提案を出すなど、執筆支援機能を提供。
自動タグ付け・分類・SEO対策:AIが記事内容を分析し、適切なタグ・カテゴリー・SEOタイトル・キーワードを自動で生成。
最適な利用シーン
コンテンツを中心としたWebサービス:ブログ、情報サイト、企業サイト、メディアプラットフォームなどの管理基盤として。
フロントエンド分離型の開発構成:フロントはReact/Vue/Next.jsなど、バックエンドはStrapiでAPIとAI補助機能を提供。
多言語サイト/ローカライズ対応:AI翻訳や要約を活用して、多言語コンテンツの制作・管理効率を向上。
AIの組み込み方式
Strapiでは、AIをプラグインの形でコンテンツ管理ワークフローに統合しています。これにより、文章作成、内容チェック、分類、多言語化などの作業が自動化・効率化され、よりスマートなCMS運用が可能になります。
第2位 Dify
公式サイト:https://dify.ai/
⭐️ Star数:117k
概要
Difyは、AIアプリやAIエージェントをノーコード/ローコードで構築できるプラットフォームです。誰でも素早く、会話・検索・RAGなどのインテリジェントな機能を持つアプリを立ち上げられることを目指しています。
核心AI機能
オールインワンAIアプリ構築:チャット、検索、生成、マルチモーダルなどを標準搭載。ブロック感覚で機能を組み合わせるだけでAIアプリが完成します。
プラグインによる拡張性:プラグイン機構により、独自モデルや外部API、機能モジュールを自由に追加可能。
RAG(検索拡張生成)対応:ドキュメントやデータを理解した上で回答できるようになっており、より正確で文脈に沿った応答が可能。
最適な利用シーン
チャットボット・対話型AI:知識ベースや文書検索を組み合わせた会話AIを簡単に構築。
質問応答・文書アシスタント:文書やデータに対するインタラクティブな質問が可能になり、情報の活用効率を向上。
既存システムへのAI機能追加:カスタマーサポート、レコメンド、セマンティック検索などのAI機能を既存SaaSや業務システムに組み込みたい場合。
AIの組み込み方式
Difyは、大規模言語モデルの機能をフロー化・UI化し、コードなしで会話・検索・データ理解・プラグイン連携を実現できます。これにより、ビジネスチームでもAI機能をプロダクトに素早く組み込むことが可能です。
第1位 n8n
公式サイト:https://n8n.io/
⭐️ Star数:149k
概要
n8nは、サービス・API・データベースなどをノードでつなげて自動化ワークフローを作れるオープンソースのオートメーションプラットフォームです。最近では、AIやエージェント機能との連携も進み、より高度な自動化が可能になっています。
核心AI機能
AIノード対応:ワークフロー内にAIノードを追加し、OpenAIなどのモデルを使って文章生成・要約・推論などを実行可能。
エージェント型自動化:n8nをAIエージェントの制御ハブとして使うことで、条件分岐、外部API呼び出し、スケジューリングなどを自動で実行。
豊富な連携エコシステム:データベース、メール、Webhook、APIなど数百種類のノードがあり、AI機能も既存フローにスムーズに統合できる。
最適な利用シーン
業務自動化・システム連携:データ同期、通知、イベント処理、モニタリングなどの繰り返し作業を自動化。
AIによる自動判断・処理:テキストの自動分類、要約生成、自動返信など、AIをトリガーにした高度な処理。
AI中台 / エージェント基盤:複数システムとAIの間をつなぐハブとして機能し、業務全体の知的自動化を実現。
AIの組み込み方式
n8nでは、AIを視覚的なフローノードとして組み込めるほか、エージェント制御ロジックや外部API連携を通じて、テキスト処理・意思決定・タスク実行を自動化できます。これにより、ノーコードで高度なAIワークフローを構築可能です。
最後に
今回紹介した11のツールから見えてくるのは、AIがすでに多様な形でノーコードの世界に溶け込み始めているということです。
- 自然言語でUIやデータモデルを生成(NocoBase・ToolJet・NocoDB)
- AIによる開発支援・ロジック自動生成(Budibase・NocoBase)
- ビジュアルなAgent構築と自律型ワークフロー(Sim・Flowise・Coze Studio・n8n)
- RAGやナレッジQAアプリの構築(Dify・AnythingLLM)
- コンテンツ制作・管理のスマート化(Strapi)
データ建模から業務フローの自動化、コンテンツ制作からQAシステムまで、AIはもはや「便利な追加機能」ではなく、ノーコード開発そのものを新しく作り変えています。 “より軽く、より速く、より創造的に。” スマートなプロダクトをつくることは、これまでよりずっと身近なものになりました。
きっとこれからは、 「コードを学ぶべきか?」ではなく、** 「AIとどう協力してアプリをつくるか?」** が語られる時代になるのかもしれません。
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