はじめに
Airtable や Notion を使ったことがあるなら、きっと私と同じように感じているはずです。Excel や Google スプレッドシートよりも、ずっと手軽で便利だと。
私たちのチームでは、社内の業務プロセス管理には主に自社製品の NocoBase を使っていますが、ブログ記事の企画など個人的な作業には今でも Notion を愛用しています。
💬 NocoBase ブログへようこそ。NocoBase は、エンタープライズアプリケーションや業務ツール、ワークフローシステムを構築できる、オープンソースのノーコード/ローコード開発プラットフォームです。セルフホスティング、プラグインアーキテクチャ、開発者フレンドリーな設計が特徴です。→ GitHubで詳しく見る
Airtable や Notion は、軽くて柔軟な用途にはとても便利です。でも、長期的なマルチユーザープロジェクトで使い続けると、必ず「データ上限」という壁にぶつかります。
(このテーマについては、以前「Airtable のデータ上限に達したとき、どうする?代表的な3つの対処法」という記事でも紹介しました)
そこでよく聞かれるのが、「Airtable のように直感的に使えて、しかもデータベース並みの柔軟性を持つオープンソースのノーコードツールはないの?」という質問です。
答えは「あります」。しかも年々進化中です。
この記事では、無料で使えるオープンソースツールをいくつか取り上げ、次の3つのポイントから比較していきます。
- 無料版で扱えるデータ量は?
- オープンソース版と商用版の違いは?
- チーム導入や長期運用に向いているのはどれ?
個人開発者の方も、チームでのツール選定をする方も、ここから新しい選択肢を見つけられるはずです。
1. NocoBase
- GitHub: https://github.com/nocobase/nocobase
- 公式サイト: https://www.nocobase.com
- スター数: 16.3k
- コントリビューター: 94
- 活動状況: ほぼ毎日更新、活発なコミュニティ
概要
NocoBase は、中規模から大規模まで幅広い業務システムに対応できるオープンソースのノーコードプラットフォームです。コンセプトは「データモデリングを軸にアプリを構築する」こと。
Airtable と比べ、NocoBase はより本格的なモデリング機能を備えており、フィールド・ビュー・リレーションの定義、権限設定、ワークフロー構築、ページレイアウト設計、プラグインによる機能拡張まで、すべてを一つの環境で行えます。
つまり「データベース + 権限管理 + フロントエンド + ワークフロー + プラグイン」を統合した、フルスタック型のノーコード基盤です。
💡 詳しくはこちら: NocoBase vs Airtable: 柔軟かつカスタマイズ性の高いオープンソース代替ツール
インターフェース
バージョン比較
全エディションでデータ・ユーザー数は無制限
エディション | データ上限 | ユーザー上限 |
---|---|---|
無料 & オープンソース | 無制限 | 無制限 |
スタンダード | 無制限 | 無制限 |
プロフェッショナル | 無制限 | 無制限 |
エンタープライズ | 無制限 | 無制限 |
オープンソース版でも、複数テーブル間での共同作業システムを制限なく構築可能。商用版は、より高度な要件を持つエンタープライズ向けに設計されています。
主な特徴
- 全エディションで行数・ユーザー数が無制限
- 1対多、多対多、複雑な関係にも対応する柔軟なデータモデリング
- 権限管理・ワークフローエンジンを標準搭載
- 必要に応じて機能を追加できるプラグインシステム
おすすめの利用シーン
カスタマイズ性とセルフホスト環境を重視する技術チームや中〜大規模企業に最適。社内システム、業務管理、CRM、チケッティングなどに強く、個人用途にはやや大きすぎる場合もあります。
2. NocoDB
- GitHub: https://github.com/nocodb/nocodb
- 公式サイト: https://nocodb.com
- スター数: 56.3k
- コントリビューター: 325
- 更新頻度: 週1回以上、活発なコミュニティ
概要
NocoDB は、MySQL や PostgreSQL などのリレーショナルデータベースを、Airtable のようなスプレッドシートUIに変換できるオープンソースツールです。直感的に操作できる画面、複数のビュー、基本的な権限管理、自動生成 REST API を搭載。
「スプレッドシート感覚 + データベース接続」に特化しており、軽めのデータ管理やダッシュボード、社内向けツールに向いています。
インターフェース
バージョン比較
エディション | データ上限 | ユーザー上限 |
---|---|---|
無料 | 1,000 | 3 |
Plus | 50,000 | ユーザーごとの料金(最大9名) |
ビジネス | 300,000 | ユーザーごとの料金(最大9名) |
エンタープライズ | 無制限 | 無制限 |
オープンソース版で多くの基本用途に対応可能。大規模利用やコンプライアンス対応が必要な場合はエンタープライズ版が有効です。
特徴
- シンプルで学習コストが低く、Airtable の代替として導入しやすい
- 任意のデータベースと接続可能
- 自動生成 REST API で外部連携が簡単
- セルフホストでデータを完全管理
おすすめの利用シーン
複雑なデータモデリングが不要で、短期間でセットアップし、データベースと連携させたいチーム。
3. Teable
- GitHub: https://github.com/teableio/teable
- 公式サイト: https://teable.io
- スター数: 19.2k
- コントリビューター: 38
- 更新頻度: 定期的、小規模ながら活発
概要
Teable は、AI 機能を備えたノーコードのスプレッドシートツールで、「スプレッドシート感覚でデータベースを使える」ことを目指しています。多彩なフィールドタイプ、グループ化・フィルタリング、リアルタイム共同編集などを備え、非エンジニアでも直感的に使えます。
インターフェース
バージョン比較
エディション | データ上限 | ユーザー上限 |
---|---|---|
無料 | 3,000 | — |
アドバンス | 250,000 | ユーザーごとの料金 |
プロフェッショナル | 1,000,000 | ユーザーごとの料金 |
エンタープライズ | 1,000,000 | ユーザーごとの料金 |
オープンソース版でも基本的なオンライン共同編集が可能で、スプレッドシートの操作感を重視する小規模チームにぴったり。商用版は、サーバー管理や保守を避けたい場合に向いています。
特徴
- Airtable に似た馴染みやすいUI
- 基本的なフィールド管理やビュー、共同編集機能を搭載
- セルフホストによるプライベート利用が可能
おすすめの利用シーン
シンプルで共同作業ができるテーブル管理が必要な小規模チームや個人ユーザー。
4. Baserow
- GitHub: https://github.com/bramw/baserow
- 公式サイト: https://baserow.io
- スター数: 2.8k
- コントリビューター: 46
- 更新頻度: 月1回程度
概要
Baserow は、「スプレッドシート感覚でデータベースを管理できる」ことを売りにした Airtable の代替ツールです。直感的でわかりやすい UI を備え、複数ユーザーでの共同編集、複数ビュー、フィールドタイプ設定に対応します。
インターフェース
バージョン比較
エディション | データ上限 | ユーザー上限 |
---|---|---|
無料 | 3,000 | 1 |
プレミアム | 50,000 | ユーザーごとの料金 |
アドバンス | 250,000 | ユーザーごとの料金 |
特徴
- シンプルで直感的な UI、すぐに使い始められる
- 複数テーブル間の基本的な連携に対応
- セルフホスト・SaaS の両方で利用可能
- 自動化や高度な権限、外部連携は限定的
おすすめの利用シーン
できるだけ簡単に導入したい小規模チームや短期プロジェクト。
5. APITable
- GitHub: https://github.com/apitable/apitable
- 公式サイト: https://aitable.ai
- スター数: 14.8k
- コントリビューター: 66
- 最終更新: 約3か月前
概要
APITable は、「すべてを API でつなぐ」をコンセプトにしたスプレッドシート型のノーコードツールです。フィールドタイプや複数ビュー、権限管理、Webhook、自動生成 API をサポートし、外部連携に強みがあります。
ただし、無料版やコミュニティ版は非常に制限が厳しく、行数は100行・ユーザーは2人まで。多くの基本機能(高度なフィールド、権限設定、オートメーションなど)は有料プランでのみ利用可能です。
インターフェース
バージョン比較
エディション | データ上限 | ユーザー上限 |
---|---|---|
無料 | 100 | 2 |
スターター | 10,000 | ユーザーごとの料金 |
Plus | 20,000 | 無制限 |
Pro | 50,000 | 無制限 |
ビジネス | 50,000 | 無制限 |
エンタープライズ | カスタム | 無制限 |
コミュニティ | 100 | 2 |
APITable エンタープライズ | 50,000 | カスタム |
AITable プレミアム | 50,000 | カスタム |
APITable のエディション構成は複雑で、行数・ユーザー数・利用できる機能に細かい制限があります。
特に無料版とコミュニティ版は非常に制限が厳しく、利用できるのはわずか 100 行と 2 ユーザーのみ。高度なフィールドや権限管理、オートメーションなどの基本機能でさえ、有料プランにしないと使えません。
さらに、商用版でも機能が細かく分かれているため、プランによって操作体験に差が出やすい設計です。移行の手間やコストもかかる可能性が高いため、導入前に必要な要件をしっかり洗い出しておくことが重要です。
特徴
- Airtable に似た UI で移行しやすい
- 「スプレッドシートを API 化」してシステム連携を容易に
- 無料版・コミュニティ版は制限が大きく、導入前の要件確認が必須
おすすめの利用シーン
API 連携を重視し、軽量なデータ管理を行いたいプロダクトマネージャーや開発チーム、中小企業。
6. Rowy
- GitHub: https://github.com/rowyio/rowy
- 公式サイト: https://www.rowy.io
- スター数: 6.7k
- コントリビューター: 43
- 最終更新: 約9か月前
概要
Rowy は見た目は他のスプレッドシートツールに似ていますが、Firebase/Firestore 専用に設計されたツールです。Airtable のようなデータ管理に加え、ブラウザ上でそのままクラウド関数を記述して即デプロイでき、NPM パッケージや外部 API もバックエンド構築なしで組み込めます。
インターフェース
バージョン比較
エディション | データ上限 | ユーザー上限 |
---|---|---|
ベース | 1プロジェクト | 無制限 |
プロ | 無制限 | ユーザーごとの料金 |
ビジネス | 無制限 | ユーザーごとの料金 |
特徴
- Firestore ベースで、データベースの規模に合わせて拡張可能。行数制限なし
- 豊富なフィールドタイプと柔軟なビュー設定
- フィールド単位の権限管理と監査ログをサポート
- ブラウザから直接クラウド関数を作成・デプロイ可能
おすすめの利用シーン
すでに Firebase/Firestore を利用しており、スプレッドシートの操作感に加えて自動化や権限管理まで一括で行いたいチーム。特に素早く開発を回す Web 開発チームに最適。
まとめ
今回紹介したオープンソースツールは、同じノーコードデータベースでもそれぞれ個性があります。
- NocoBase — データモデリングとシステム構築に特化
- NocoDB / Teable — 操作しやすく、外部連携もしやすい
- Rowy — Firebase など特定のアーキテクチャに最適化
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